訪問診療は介護保険ではなく医療保険が適用!往診や居宅療養管理指導のケースや保険別で解説

自宅で診察や治療を受けられる在宅医療は、高齢化が進む日本で今後も需要が増えると予想されます。在宅医療ではサービスに応じて医療保険と介護保険を使い分けるため、手続きや申請に悩んだ方もいるのではないでしょうか。

在宅で行われる訪問診療と往診は医療保険、居宅療養管理指導は介護保険の適用範囲です。この記事では医療保険と介護保険が適用となる条件や範囲について明確にし、費用の算定方法についてもケース別に解説します。

目次

訪問診療は介護保険ではなく医療保険が適用される

介護保険の適用範囲と混同されるかもしれませんが、訪問診療に適用されるのは医療保険です。

訪問診療とは、通院が難しい患者さんに対して、自宅や施設で診療・治療を行います。訪問診療の対象となる患者さんのうち、85%以上の方が要介護状態です。訪問診療を利用している患者さんが受けている医療内容は「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬援助・管理」のみの方は全体の46%で、残りの54%の方は「点滴・中心静脈栄養・注射(約11%)」といった処置・管理を受けています。

往診も医療保険が適用される

往診で提供されるサービスは診療・治療にあたるため、医療保険が適用されます。往診とは、通院が難しい患者さんの容態が急変した際、患者さんの希望で医師が自宅や施設に訪問して診療をすることです。

訪問診療と往診の大きな違いは「定期的」に行われている診療かどうかです。訪問診療では基本的に毎週あるいは隔週の決まった曜日、時間に医師が訪問して診察や治療を行います。

往診と訪問診療は医療機関によって対応可能な範囲に差があるため、患者さんの病態によっては、24時間対応できる病院を往診先に選ぶと安心です。

往診と訪問診療の違いについて詳しく知りたい人はこちらの記事を参照してください。

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居宅療養管理指導は介護保険が適用される

居宅療養管理指導は対象者が「要介護者」となるため介護保険が適用されます。居宅療養管理指導は、医師が患者さんの自宅に訪問し、「健康管理や指導」をするサービスです。医療保険が適用される往診や訪問診療で提供される「医療行為」とは異なります。居宅療養管理指導を利用する際は、介護保険の適用範囲である点と合わせて、受けられるサービス内容についても理解が必要です。

居宅療養管理指導とは要介護認定を受けている人向けのサービス

居宅療養管理指導では、通院困難な「要介護者」に向けた介護サービスが提供されるため、介護保険が適用されます。要介護状態となった場合でも、可能な限り自宅で自立した日常生活を送るために、療養上の指導や管理をすることが目的とされています。

居宅療養管理指導が適用となる条件は以下の2点です。

・居宅に月1回以上、訪問診療または往診を利用している

・ケアマネジャーへ診療情報提供を定期的に行っている

居宅療養管理指導の適用要件には往診や訪問診療を含むため、介護保険と医療保険の両方を使って医療および介護サービスを受けている方が多いです。

訪問診療と居宅療養管理指導の違い

訪問診療と居宅療養管理指導の違いは、行われるサービスと適用される保険が異なることです。

訪問診療では、通院が難しい患者さんに、医師が自宅または施設などの居宅に訪問し診察や治療を行います。ここで患者さんが受けるのは医療サービスのため、適用されるのは医療保険です。

居宅療養管理指導では医師が患者さんの自宅に訪問して、健康管理や指導を行います。居宅療養管理指導の対象となる患者さんは、以下の要介護認定を受けている方に限られます。

・要介護1~5に認定されている65歳以上の高齢者

・パーキンソン病など16種類の特定疾病にかかり要介護認定を受けている40歳から64歳の人

介護保険の適用となるためには、ケアマネジャーが作成する介護サービス計画(ケアプラン)に情報提供が必要です。介護サービスは医師や看護師からだけでなく、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士からもサービスを受けられますが、職種ごとに頻度が規定されています。

適用される保険と負担割合で費用は変わる

訪問診療は医療保険の負担割合、居宅療養管理指導は介護保険の負担割合がそれぞれ適用されます。訪問診療の費用は、患者さんが受ける医療サービスの内容、加入している健康保険によって異なります。

訪問診療の費用内訳は、以下2つです。

・基本診療費用

・追加加算される診療費用

訪問診療における基本診療は「在宅時医学総合管理料」と「在宅患者訪問診療料」の2項目です。追加加算の対象となる費用は、採血などの検査、在宅酸素などの医療機器の使用、抗がん剤治療などの診療費が対象となります。

日本では国民皆保険制度によって、医療保険が適用される医療費の自己負担額は基本的に3割です。年齢・所得に応じて1〜3割の負担に変動します。訪問診療は医療保険の適用となるため、患者さんが実際に負担する割合は3割以下です。

居宅療養管理指導費は、介護保険の適用であり、要介護度にかかわらず一律で費用負担が必要となります。要介護度別の区分支給限度基準額までは、患者さんごとの所得に応じて1〜3割負担ですが、限度額以上は全額自己負担です。居宅療養管理指導費は限度額が適応されないサービスのため、通常の介護保険サービスと同様に費用の1〜3割を患者さんが負担します。

居宅療養管理指導と訪問診療は併用ができる

適用される公的保険は異なりますが、居宅療養管理指導と訪問診療の併用は可能です。

居宅療養管理指導は、患者さんが可能な限り自宅で自立した日常生活を送るために、療養上の指導や管理をすることを目的としています。居宅療養管理指導で受けられるサービスは「健康管理上のアドバイスや指導」であるため、医療行為は含まれません。

訪問診療は通院が困難な患者さんに向けた医療サービスです。訪問診療では提供できない介護サービス、居宅療養管理指導では提供できない医療サービスがあるため、自宅での治療・療養には居宅療養管理指導と訪問診療の併用が不可欠と言えます。

併用した場合の算定方法

居宅療養管理指導と訪問診療を併用した場合、費用算定に注意が必要です。

訪問診療で算定される診療報酬には「在宅患者訪問診療料」と「在宅時医学総合管理料」があります。

「在宅患者訪問診療料」は定期的に訪問して診療を行った場合に評価されます。原則として週3回の算定が限度ですが、末期の悪性腫瘍(がん)など一部の疾患については例外です。

「在宅時医学総合管理料」は総合的な医学的管理に対して月1回算定できます。患者さんが療養している施設や患者さんの病状によっても診療報酬が異なるので、算定時に注意が必要です。

居宅療養管理指導は月2回を限度として算定できます。居宅療養管理指導には「居宅療養管理指導(Ⅰ)」と「居宅療養管理指導(Ⅱ)」があり、訪問診療の診療報酬で「医学総合管理料」を算定した患者さんについては(Ⅱ)を、それ以外の患者さんは(Ⅰ)を用いて算定します。

例えば、月2回の訪問診療で在宅時医学総合管理料が算定される場合、同時に居宅療養管理指導を行うと、月2回までは(Ⅱ)で算定できます。(Ⅰ)は500単位、(Ⅱ)は290単位を算定するため、訪問診療と併用した場合、居宅療養管理指導の金額は安くなります。

適用される保険を確認しておこう

訪問診療と往診、居宅療養管理指導について紹介しました。それぞれに適用される保険と各サービスの要点は以下の通りです。

・訪問診療と往診は医療保険、居宅療養管理指導は介護保険が適用される

・訪問診療は通院ができない患者さんに対して在宅で医療サービスを提供する

・居宅療養管理指導を受けられるのは要介護認定を受けている人

高齢化が進む日本では、訪問診療や在宅介護の需要が年々増加しています。一方で、必要な医療・介護サービスの範囲は患者さんごとに大きく異なります。訪問診療、居宅療養管理指導で受けられるサービス内容や、受けるための条件を適切に理解しましょう。

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この記事を書いた人

墨田区出身
東京医科大学医学部医学科卒業
東京医科大学産科婦人科学教室入局
浅田レディースクリニック(不妊治療)
複数の在宅診療所での勤務を経て
「こはる在宅クリニック」を開設

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