訪問看護を受けるとき、疾病や身体の状態によって訪問回数や負担額に違いがあることを知っていますか?
訪問看護は、厚生労働省が定める「別表7」に該当すると医療保険が適用され、介護保険の場合と比べて訪問回数や負担額の上限が違います。
「別表8」に該当すると、長時間の訪問看護を受けることなどが可能です。この記事では、「別表7」と「別表8」についての概要と、どのような特例があるかを解説しつつ、混同しがちな特定疾病との違いについてもくわしく解説します。
厚生労働大臣が定める「別表7」と「別表8」とは
「別表7」と「別表8」とは、通常よりも多くの医療的介入が必要な疾患や状態に該当する人のことで。厚生労働大臣によって該当する疾病などが定められています。「別表7」や「別表8」に該当すると、通常の訪問回数や訪問時間を超えた訪問看護を受けられるなどの特例があります。
「別表7」や「別表8」に該当する条件や訪問看護を医療保険で受けられるメリット、「別表7」と混同しやすい特定疾病との違いについても以下で解説します。
「別表7」とは医療保険適用で訪問看護を受けられる「疾病」
「別表7」に該当する疾病は以下のとおりです。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
- 多系統萎縮症
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
「別表7」に該当すると医療保険で訪問看護が受けられます。医療保険に切り替わることによって週4日以上の訪問が可能になります。その他にも、訪問看護に使用していた介護サービスの枠が空くので、訪問リハビリテーションなど他の介護サービスを活用することができるのです。さらに、医療保険になると高額療養費制度が適用されるので、所得に応じた自己負担額の上限が決まります。
「別表8」とは特別な管理が必要「状態」
「別表8」とは、以下のように特別な管理が必要な状態の人です。
- 在宅悪性腫瘍等患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者
- 以下のいずれかを受けている状態にある者
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
- 在宅自己導尿指導管理
- 在宅人工呼吸指導管理
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理
- 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
- 真皮を越える褥瘡の状態にある者
- 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
「別表8」だけに該当する人は介護保険を利用しますが、「別表7」と両方に該当する人は医療保険が適用されます。「別表8」の状態の患者さんは多くの時間が処置のためにかかり、頻回な訪問も必要になるので、時間や回数の制限なく訪問看護を受けられる特例が設けられています。
「特定疾病」との違い
特定疾病は、加齢に伴う心身の変化によって要介護状態を引き起こしやすい疾病のことです。介護保険の対象は通常65歳以上の方ですが、特定疾病になった場合は40〜65歳未満の方も介護保険の対象となります。特定疾病では16の疾病が定められていますが、半数以上の疾病が「別表7」と重なっているため、両者を混同してしまうことがあります。「別表7」にない特定疾病は、医療保険ではなく介護保険の適用になるので注意が必要です。
別表7・8に該当すると訪問看護の上限回数が変わる
訪問看護の回数は通常週3日までですが、「別表7」や「別表8」に該当すると週4日以上可能になります。訪問看護の上限回数以外にも、「別表7」と「別表8」には以下のようにさまざまな特例があります。
別表7に該当することによる他の特例
訪問看護の上限回数以外の特例は以下のとおりです。
- 要介護認定者でも、医療保険で訪問看護を受けることができる。
- 最大3ヶ所の訪問看護ステーションを利用できる。
- 主治医が必要と認めた場合は、1日に複数回訪問看護を利用できる。
- 退院当日に訪問看護を利用できる。
- 入院中の外泊期間にも2回まで訪問看護を利用できる。
「別表7」の疾病は、医療的介入が必要なため、さまざまな特例があり、高齢者施設へ入所している人でも利用可能です。
別表8に該当することによる他の特例
「別表8」の状態かつ「別表7」の疾病に該当する場合は、医療保険で訪問看護が受けられ、下記の特例があります。
- 高額療養費制度の対象になる。
- 複数の訪問看護ステーションの利用ができる。(最大3箇所)
- 1日に複数回の訪問看護の利用ができる。
- 退院日や入院中の外泊期間も訪問看護の利用ができる。
- 90分を超える長時間の訪問看護を受けることができる。
多くは「別表7」と同様の特例ですが、90分を超える長時間の訪問看護が可能な点が違います。「別表8」の状態では処置に時間を必要とすることが多いので、長時間の訪問看護に対して特例があります。
「別表8」の状態のみに該当して介護保険で訪問看護を受けるときは、訪問回数や訪問ステーションの数などの制約はなく、ケアプランに含まれていれば利用することができます。ただし、介護保険の支給限度額の範囲内で利用しなければならないので、他の介護サービスとのバランスを考える必要があります。
「特別訪問看護指示書」が交付された場合も週4回以上の訪問が可能
特別訪問看護指示書とは、疾病の状態によって頻回な訪問看護が必要だと主治医が判断した場合に交付する指示書です。交付を受けると、有効期間中(最長14日間)は、週4日以上訪問看護を受けることができます。その際は医療保険が適用され、1〜3割の自己負担額で訪問看護の利用が可能です。
急性感染症の急性憎悪や末期の悪性腫瘍等以外の終末期、退院直後などの場合は月1回交付されます。気管カニューレを使用していたり、真皮を超える褥瘡があったりする場合は月2回まで交付されることがあります。
1週間の訪問回数で「基本療養費」が変わる
1週間に3日以内の訪問と4日以上の訪問では、「基本療養費」が変わる場合があります。訪問看護基本療養費には以下のⅠ・Ⅱ・Ⅲがあります。
- 訪問看護基本療養費Ⅰ・・Ⅱ、Ⅲに該当しない、自宅等での療養の方。
- 訪問看護基本療養費Ⅱ・・施設など同一建物に対象者が複数いて同日に訪問する場合。
- 訪問看護基本療養費Ⅲ・・外泊中の入院患者。
訪問看護基本療養費Ⅰ・Ⅱに該当する場合は、1週間の訪問回数で金額が変わります。
訪問看護基本療養費Ⅰの場合で具体的に説明します。
訪問回数が週3日までは5,550円/日、週4日目以降は6,550円/日です。医療保険が適用されると自己負担額は1〜3割なので、週3日までは555円〜1,665円/日、週4日目以降は655円〜1,965円/日です。
訪問看護基本療養費Ⅱは移動時間が省略でき、複数人を続けて看護できるためやや低めの料金設定です。同一日に2人までは訪問看護基本療養費Ⅰと同じですが、同一日に3人以上が訪問看護を受けると、週3日までは2,780円/日、週4日以上は3,280円/日になります。入院患者の外泊時に適用される訪問看護基本療養費Ⅲは、1週間の訪問回数に関係なく8,500円/日かかります。
介護保険の訪問看護は上限回数がない
介護保険の場合、訪問看護の回数に上限はありませんが、要介護度に応じた支給限度額があります。支給限度額の中で介護サービスを利用する必要があり、それを超えると全額自己負担となります。介護サービスには訪問看護以外にも、入浴介助、リハビリ、デイサービス、ショートステイなどたくさんのサービスがあるので、必要なものをバランスよく利用できるようにケアプランを作成してもらわなければなりません。
別表7・8への理解を深めて訪問看護を受けよう
「別表7」の疾病や「別表8」の状態であると、訪問看護を医療保険で受けられたり、さまざまな特例を活用できたりします。医療的介入が必要な疾患や病状であると、在宅で看護や介護をする家族だけでは心配なこともあります。「別表7」や「別表8」に該当するかどうかを確認し、どのような特例が受けられるかを知っておくことが大切です。特定疾病など混同しやすいものもあるので、難しくてわからない場合は、主治医やかかりつけ医療機関に相談しましょう。