訪問診療のルールは6つ!サービスの利用条件や点数が加算される場合についても解説

医師が定期的に自宅へ診療に来てくれるサービスとして、訪問診療があります。在宅で過ごす患者さんやご家族にとって訪問診療は、心身ともにとても助けになるサービスです。この記事では、訪問診療を適切に利用するために、訪問診療のルールやサービスの利用条件、加算などについて解説します。

目次

訪問診療のルールは大きく分けて6つ

訪問診療には病院での診療とは違い、訪問回数や訪問場所、施設基準、費用など在宅医療ならではのルールがあります。訪問できない場合や、料金が追加でかかる場合もありますので、ルールを理解して適切に活用しましょう。

月2回の訪問が原則

訪問診療では、あらかじめ計画を立てて医師が定期的に訪問します。例えば「第2・第4水曜日の13時」というように、多くの場合月に2回の訪問が計画されます。在宅では入院施設とは違って、さまざまな検査や処置がすぐにできません。定期的に訪問することで、患者さんの状態を把握し、ささいな病状の変化に気づくことができます。

一時的に滞在している施設への訪問はできない

訪問診療が認められるかどうかは、「患者さんがそこで生活しているかどうか」で判断されます。入所施設は認められますが、ショートステイやデイサービスなど、一時的に滞在している施設での訪問診療は基本的に認められません。

例外としてショートステイには「30日ルール」というものがあります。自宅で診察を受けてから、もしくは退院して直接ショートステイに入所されてから30日以内であれば、ショートステイ先に訪問して診療することは可能です。

医療機関から16kmの範囲内であること

訪問診療できる医療機関は、基本的に自宅などなら16kmの範囲内と決められています。遠方からの訪問診療は医師側の負担が大きく、急変時などに地域の介護事業所との連携がスムーズに行えないかもしれないという理由です。

16km以内に患者さんの求める専門医がいない場合など、絶対的な理由があれば16kmを超える距離からの訪問が認められることもあります。

診療報酬は医療機関ごとに異なる

訪問診療している医療機関にはさまざまな形態があり、厚生労働省から認可を受けている機能強化型在宅療養支援診療所や、病床の有無によって診療報酬が変わってきます。

機能強化型の条件には、常勤で3人以上の医師がいることや、往診・看取りの実績などが必要です。診療報酬が高くなるため患者負担も増えてしまいますが、手厚いサポートが期待できます。

看取りをしない医療機関が多い

令和元年度高齢社会白書によると、60歳以上の約半数が、万一治る見込みのない病気になった場合、自宅で最後を迎えたいと答えています。それに対し厚生労働省の調べでは、在宅で看取りをしている医療機関の数は全体の5%程度にとどまっています。自宅で最期を迎えようと希望する場合、看取りをしている医療機関を見つけることも重要です。

往診には別途費用がかかる

患者さんや家族からの依頼があり、定期診療以外で診療することを往診といい、往診には通常の訪問診療料に追加で往診料がかかります。医療機関の種類(機能強化型・有床・無床)や往診時間、診療内容などによっても費用が変わり、交通費も実費でかかる場合があります。

往診についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

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訪問診療の対象になる条件

訪問診療の対象は、「自宅や施設で療養しており、疾病や傷病のために通院が困難な方」です。とくに疾患や介護度などによる基準はなく、条件を満たせば利用できます。病気や障害のある方にとって、定期的な通院はとても負担です。通院が困難かどうかは医師の判断によるところも大きいので、判断が難しい場合は一度医療機関などへご相談ください。

通院が困難な場合

在宅酸素療法や中心静脈栄養などを行っており、ご自宅から医療機関への通院が困難な場合は、訪問診療を利用できます。

介護が必要な場合

歩行が困難な場合や寝たきり、認知症でご家族の介護が必要な場合など、ご自身だけで通院できず介護が必要な場合は訪問診療を利用できます。

自宅での療養を希望する場合

さまざまな理由で入院施設ではなく、自宅での療養を希望する場合も、条件を満たせば訪問診療を利用できます。療養環境である自宅を医師に見てもらえるため、生活指導などのアドバイスをもらいやすいメリットもあります。

がん・末期・難病・重度障害者の場合

がんや他の病気で終末期になった場合、自宅で最期を迎えたいという方は多いです。難病や重度障害の場合も、訪問診療を受けることで住み慣れた自宅で家族と過ごしながら看取りをしてもらうこともできます。

病院から退院した後のケアが必要な場合

経管栄養の栄養管理、人工呼吸器、在宅酸素療法、褥瘡(床ずれ)など、退院した後も医療的ケアの必要な場合があります。定期的に医師の診察は必要ですが、通院が難しい場合は訪問診療の対象です。

訪問診療を受けるまでの流れ

訪問診療を受けたいと思ったら、まずは以下のところに相談してください。

・利用希望の医療機関やかかりつけ医

・お住いの市区町村の介護保険担当窓口や保健所

・担当のケアマネジャー

・入院中の場合は病院のソーシャルワーカー

・訪問看護ステーション

次に、相談員や看護師が自宅や入院施設へ事前訪問します。病状の把握、診療内容や費用、緊急時の対応について説明し、内容に問題がなければ契約書を作成します。契約をする前に、分からない点や、患者さんやご家族の希望などはしっかりと伝えておくことが大切です。

契約後は計画に沿って定期的に訪問します。訪問診療の開始後も、困っていることや疑問などがあればその都度相談しましょう。

訪問診療を受ける際に必要なもの

訪問診療を受ける際には、いくつか必要なものがあります。お住まいの地域や医療機関によっても必要書類は多少異なりますが、基本的に以下の書類が必要です。

・医療保険証、公費証明書、各種受給者証

・現在かかっている病院やクリニックからの紹介状

・お薬手帳など現在服用中の薬が分かるもの

・介護保険証、介護保険負担割合証

・限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証など

・印鑑

訪問診療は介護認定を受けていなくても利用できるサービスですが、介護保険を使うことで福祉用具の貸与や訪問看護、通所介護などの介護サービスも受けられます。ケアマネジャーなどと相談して、介護認定の申請も合わせて行いましょう。

訪問診療のルールを把握し、サービスを適切に利用しよう

訪問診療は、病気や障害のために通院が困難な方が利用できるサービスです。適切に活用することで在宅療養の負担を軽減し、ご自分らしく生活していく助けになります。

医療機関による費用の違いや、訪問診療ならではのルールを理解して、ご家族にあった適切なサービスを利用しましょう。訪問診療について気になる場合は、かかりつけ医やケアマネジャーなどに問い合わせしてみましょう。

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この記事を書いた人

墨田区出身
東京医科大学医学部医学科卒業
東京医科大学産科婦人科学教室入局
浅田レディースクリニック(不妊治療)
複数の在宅診療所での勤務を経て
「こはる在宅クリニック」を開設

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