訪問看護では、特別な管理が必要な方に算定できる「特別管理加算」があります。特別管理加算は医療保険・介護保険の両方にありますが、同月に両方は算定できないなど注意すべきルールがいくつかあります。
この記事では、医療保険・介護保険それぞれの算定要件や、加算の種類について詳しく解説します。
訪問看護における「特別管理加算」とは
特別管理加算とは、留置カテーテルなど特別な管理が必要な利用者に対して、計画的な管理のもとサービスを提供したときに月1回だけ算定できる加算です。
以下のサービスを提供している事業所のうち、要件を満たした施設のみ算定することができます。
- 訪問看護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 看護小規模多機能型居宅介護
医療保険・介護保険どちらも利用することができますが、加算を算定するための条件や料金形態は異なり、利用者の状態によっても金額が変わります。
医療保険も介護保険も特別管理加算の対象
特別管理加算は医療保険と介護保険で算定要件が少し違いますが、どちらの保険でも算定することが可能です。
医療保険では、24時間対応できる体制を整備していることなどを地方厚生局へ提出することが要件になっています。介護保険では緊急時訪問看護加算の届け出は必要ありませんが、連絡を受けたときに常時対応できる体制を整備することが求められています。
特別管理加算の対象となる利用者は、厚生労働省が定める「別表8」の状態に該当する方です。「別表8」の状態は頻回な訪問や定期的なケアなどの特別な管理が必要なため、特別管理加算をはじめとしたさまざまな特例があります。
「別表8」について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
>> 訪問看護の「別表7」と「別表8」とは?病名・訪問回数の上限や特定疾病との違いについて解説!
算定要件を満たしている事業所は年々増えている
医療保険で特別管理加算を算定するためには、地方厚生局に「緊急時訪問看護加算・特別管理体制・ターミナルケア体制に係る届出書」を提出する必要があります。
特別管理加算を算定するための要件は以下の3つです。
- 24時間常時連絡できる体制を整備している
- 特別管理加算に対応可能な職員体制・勤務体制を整備している
- 病状の変化、医療器具に係る取扱い等において、医療機関等との密接な連携体制を整備している
認められた事業所以外は算定できませんが、厚生労働省の資料を見ると、在宅訪問の需要増加にともない、算定要件を満たしている事業所は年々増加しています。
「特別管理加算」には2種類ある
特別管理加算には「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」の2種類あり、それぞれ対象となる利用者や加算金額が違います。
「特別管理加算Ⅰ」は重症な状態にある方が対象で、「特別管理加算Ⅱ」は継続的な管理が必要ですが、比較的症状は重くない方が対象です。
特別管理加算Ⅰの対象者は「重症な患者」
特別管理加算Ⅰの対象者は、以下のような重症な状態にある方です。
- 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている
- 在宅気管切開患者指導管理を受けている
- 気管カニューレを使用している
- 留置カテーテルを使用している*
*留置カテーテルには膀胱留置カテーテルだけでなく、経鼻経管栄養チューブ、胃ろう、腹膜留置カテーテルも該当します。
注意点として、留置カテーテルを使用していればすべて算定できるわけではありません。排液の量や状態チェック、薬剤の使用、水分量の調整などの管理計画に準じて行った場合のみ算定することができます。
加算金額は医療保険も介護保険も1か月で5,000円です*。自己負担割合に応じて支払い金額が決まりますので、1割負担の場合は500円/月程度が自己負担額です。
*正式には介護保険は500単位/月と表現しますが、1単位10円で計算するので加算金額は同じになります。
特別管理加算Ⅱの対象者は「軽症な患者」
特別管理加算Ⅱの対象となる方は以下の通りです。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
- 在宅自己導尿指導管理
- 在宅人工呼吸指導管理
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理
- 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
- 真皮を越える褥瘡の状態にある者
- 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態*
*医療保険では、「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」が対象となっていますが、算定条件は同じです。
特別管理加算Ⅰに比べて症状の軽い方が対象ですが、透析の管理や点滴での栄養管理など、頻回に訪問して管理が必要な状態のため特別管理加算の対象となります。
加算金額は医療保険も介護保険も1か月で2,500円です。自己負担割合に応じて支払い金額が決まりますので、1割負担の場合は250円/月程度が自己負担額となります。
特別管理加算に関する注意点
特別管理加算を算定する上でいくつかの注意点があります。
利用者が特別管理加算ⅠとⅡの両方に該当する場合でも、どちらか片方しか算定することはできません。その場合は、金額の大きい特別管理加算Ⅰを算定することが多いです。
加算対象かどうかは、利用者の状態から判断する必要があります。該当条件を把握し、その利用者に算定していいかどうか判断できるようになる必要があります。
保険の変更があっても請求はどちらか一方のみ
特別管理加算は医療保険と介護保険のどちらでも請求できますが、月の途中で保険の変更があった場合はどちらか一方のみしか請求できません。在宅医療では介護保険を優先して使う決まりがあるため、月の途中で保険が切り替わった場合は、医療保険を使わずに介護保険で請求してください。
医療保険の場合はすべての関係ステーションで算定される
特別管理加算の対象となる利用者は、複数の訪問看護ステーションを活用している場合が多いです。医療保険の場合、特別管理加算の要件を満たしているすべての事業所で算定することが可能です。
介護保険の場合は1か所のステーションのみで算定される
利用者が複数の訪問看護ステーションを利用している場合でも、介護保険の場合は特別管理加算を1か所の事業所でしか算定できません。
協力している事業所同士で相談して、加算をどのように分配するか決める必要があります。
特別管理加算について正しく理解しよう
特別管理加算は医療保険・介護保険の両方で算定することが可能ですが、算定条件などが違います。特別管理加算にはⅠとⅡがあり、どちらの加算が対象となるかは事業所で判断する必要があるなど、注意するべきことや判断に悩むときがあります。
利用者にとって充実した訪問看護サービスを提供するためにも、特別管理加算について正しく理解できるようになりましょう。